市民こそが止められること

さいたま市公共施設マネジメント計画に対するパブコメが始まっています。パブコメ開始には間に合わなかったのですが、座長の根本先生のコメントが載っています。(下の方にスクロールすると出てきます。)

下記に転載しますので、読んでみてください。そして市民に疎まれることを覚悟して提案した行政の熱意を感じて、次は市民がそれを支持することで負のスパイラルを止めてくださることを切に願ってやみません。

さいたま市公共施設マネジメント会議 根本委員長コメント

パブリックコメントにあたり、公共施設マネジメント会議委員長として一言申し述べさせていただきます。

公共施設は私たちの暮らしを豊かにしてくれます。多ければ多いほど豊かに感じます。これからも、今まで以上に公共施設を充実させてほしいと考えるのが普通の市民の感覚です。

でも、公共施設を建設し、維持運営していくためには想像以上のお金がかかります。また、1960年代、70年代に建設された公共施設がすでに4~50年たち、物理的な限界に近づいています。

このまま何もしなければ、建物は倒れ、道路に穴が開き、水道管が破裂する事態も想定されます。これが、【インフラ崩壊シナリオ】です。アメリカでは、日本より30年前の1930年代に大規模な公共投資をはじめましたが、50年後の1980年代に古い橋が崩落する事故が起きて、公共投資のあり方を根本的に見直さざるをえなくなりました。日本も同じです。既に、古い市民ホールの天井が落ちて死亡事故になったり、使用停止になった橋や水道管から漏れた水がガス管に入り込んで市民生活に大きな影響を与える例もいくつも報告されています。

だからかといって、古いものを建て替えることも容易ではありません。最近、公共投資の予算は減少の一途をたどって来ました。少子高齢化で税金の収入は伸び悩む一方、社会福祉の費用は年々増加しているからです。建て替えるには無理に借金する必要がありますが、それは将来大きな負担となる【財政破綻シナリオ】です。すでに、日本は、財政破綻したギリシャや、G8の中でもっとも悪いイタリアの水準をも大きく超えた借金をしています。財政が破綻すれば、公共施設どころではなくなります。皆さんの子どもや孫の顔を思い浮かべ下さい。このシナリオを選択できますか。

二つの厳しいシナリオのいずれにも行けないと頭を抱えていると【なし崩しシナリオ】が待っています。利用者の声が大きいような施設に予算をつけることを繰り返していると、早晩予算がなくなります。そうすると、その時点で公共投資を中止せざるをえなくなります。古い施設を使い続ければ危険ですからその施設は休館となります。学校や病院も例外ではありません。ほとんどの市民が使うことのない立派な何とか会館の脇に、今にも壁が崩れそうな学校の校舎が残っているというおかしな状況にもなりかねません。これも避けるべき道ですが、しっかりした方針がないと、なし崩し的にこのシナリオが実現してしまうでしょう。

今、さいたま市は政令市の中でも先駆けて公共施設マネジメントをはじめました。公共施設マネジメントは、現在の世代にとっては痛みを伴う反対の多いテーマです。市は、三つの不毛なシナリオを回避し、「できるだけ財政負担を軽くしながら、できるだけサービス水準を落とさないような方法」を編み出そうとしています。

委員会は、次の世代のためにあえて困難なテーマに挑もうとする市長以下事務局の勇気に敬意を表するとともに、専門家としての知恵を出しました。次は市民の皆さんの番です。自分の子どもや孫に胸を張って残せるふるさとをつくるにはどうすべきか、真剣にお考えくださるようお願いします。