もう日本でミュージカル「CHESS」を観ることはできないと思っていたので、CHESS in Concertを観ることができて本当にしあわせです。まずは昔語りから。
とても昔に旅行でロンドンに行きミュージカルを観たのですが、ちょうどそのときに演っていました。(他にCatsとStarlight Expressを観ました。)事前に現地のお店でカセットテープ(古い!)を買って聴いたのですが、歌詞カードを辞書首っ引きで読んでもストーリーが、特に「なんで別れるのにハッピーエンドって歌うの?」がわからなかったです…単に英語力がないだけなんですけど。
その舞台では、大きなチェス盤上で人が駒になって踊る「チェスのお話」に魅了されました。アービターが颯爽と現れてカッコよかったです。
さて、今回はコンサート形式ということで、それでなくても難解なストーリーを事前の知識なしに観たら「???」のオンパレードだと思います。特にアナトリーとフローレンスが恋に落ちて、アナトリーが国を捨てて、別れてまた国に戻る…というグズグズな展開。「君たちの心はどうなってるんだ!」と思わずにはいられないかもしれません。
さて、昔語りはここまで。今日の感想は以下。
配役
アナトリー:石井一孝
フローレンス:安蘭けい
アービター:浦井健治
フレディ:中川晃教
スヴェトラーナ:AKANE LIV
アンサンブル:池谷京子、横関咲栄、角川裕明、田村雄一、ひのあらた、大野幸人
音楽監督・ピアノ:島健
これは「コンサート」です、良い意味で。これだけ歌える人をそろえたのはすごいなと思いました。
石井さんは貫禄があり、浦井さんは妖しく、中川さんは狂おしく、安蘭さんは毅然として、確かに存在していました。アンサンブルの方たちも非常に歌唱力の高い方たちばかりでした。ストーリー自体はつっこみどころ満載のとんでもストーリーなのですが、それを吹き飛ばす勢いでした。
特に久しぶりに聴いた中川さんの鬼気迫る歌。年齢を重ねてさらに歌に深みが増したような気がします。もちろんテクニックは素晴らしいです。
安蘭さんは蜷川さんのシェイクスピア劇でクレオパトラを演じていましたが、あのときの美しさとはまた別の一面を観て、宝塚恐るべし!と思ってしまいました。また、別の公演があればぜひ観に行きたいです。
浦井さん演じるアービターは、本来シブくて高圧的な役回りなのですが、ご本人が美形過ぎて色気のある威厳者…という複雑な造形になってしまったのかな?と感じました。
いろいろなミュージカルを観ているのに、石井さんは初めてでした。アナトリーの「自分はこれしかない」という容赦のない生き方を素晴らしい声で歌い上げていました。(いちばん納得できないキャラクターなんですが。)
正直、歌詞が聞き取れないところがたくさんありました。訳詞のかたも大変だったでしょうが、今回ばかりは歌い手の責任ではないと思います。だって、ほんとに難しい曲なんですもの。他にどう歌えというのだ!!
すべて難曲ばかりなのに、非常に完成度の高いコンサートとなりました。これは歌手の方ばかりではなく、オーケストラと島健さんのお力も大きいなと思います。
最後に残念だったのは、クラウン(道化)みたいな存在が全く生きていなかったことです。なにを象徴したかったのか、最後までわかりませんでした。