「アントニーとクレオパトラ」彩の国さいたま芸術劇場

蜷川幸雄さん演出の「アントニーとクレオパトラ」を観てきました。出演は吉田鋼太郎さん(アントニー)、安蘭けいさん(クレオパトラ)、池内博之さん(シーザー)、橋本じゅんさん(イノバーバス)など。

感想はひとことで言うと「バカップルもここまで規模が大きいと悲劇なんだか喜劇なんだか、もうわかりません」といったところでしょうか。ロミオとジュリエットだってもっとまわりの状況を考えてたんじゃないか…と思うほど、なんかもう破滅に向かってまっしぐらです。

開幕ですべての舞台装置を披露し、すべての役者が半分衣装をつけて挨拶に出てきます。「この装置とこのメンバーで演ります。」という告知ですね。衣装は背景の白に合わせて上品な色合いです。高貴な人たちの物語だというしるしですね。

吉田さんのアントニーは恋に溺れる少年のようです。安蘭さんのクレオパトラは天然ちゃん(少女)なのか、自国のために籠絡するつもりがうっかり本気になってしまったのか…よくわかりませんでした。橋本さんは劇団☆新感線での突き抜けた演技(お笑い担当)しか知らなかったので、抑えた演技がとても新鮮でした。

いっしょに行った仲間が「ここは笑うところか?というところで笑いが起きたけど…」と困惑していましたが、悲劇のはずなのに、どこかおかしみを感じてしまうのも確かでした。これは吉田さんや橋本さんのように喜劇も軽くこなしてしまう俳優さんたちの個性だけではなく、演出全体がどこか乾いた笑いをこの大仰な悲劇に滑り込ませようとしているのかなとも思いました。

まさかの、舞台では日本初演だそうです。3日目にしては舞台進行はスムーズでした。これからカンパニーとしてさらに練れていくのだな…と感じられる舞台でした。

新装なったさいたま芸術劇場は外観が大きく変わりました。以前は(当時流行の)コンクリート打ちっぱなしでしたが、タイル貼りの穏やかな姿になりました。内部はそのままです。